戦略的キャリアマネジメント
(前編)
代表取締役 中浦 洋平
キャリアマネジメントとは、仕事に限らず自分の人生そのものをどう生きるべきか、定期的に立ち止まって見直しを行うことで、自分らしい人生を戦略的に楽しむためのセルフマネジメントワークです。
最近では、大企業などで実施されるキャリアデザイン研修に近い内容ですが、個別性が高く、また定期的に見直すことが重要となるため、この機会に是非皆様も試して頂き、ご相談があればお気軽にご連絡ください。
■キャリアマネジメントの目的
そもそもキャリアと言うと、仕事に関する経験やスキル、知識などの職業人生に関する定義だと考えられがちですが、家庭やプライベートも含めた自分の人生そのものを広義で捉えることが重要です。
ライフシフトが提唱するこれからの100年時代では、仕事とプライベートを別物と考えるのではなく、両方がシームレスに繋がることが重要であり、双方を戦略的にマネジメントしていくことが、自分らしいキャリアへと繋がります。
自分のあるべき姿・ありたい姿は何か、周囲から何を求められているのか、実現のためにどう行動すべきかなどを定期的に考え、見つめ直すためのフレームワークです。
以前で言えば、役職定年前のミドルシニア層に対して、定年退職後の余生としてのキャリアを設計してもらうために実施するケースがほとんどでしたが、最近では30代以降の脂の乗った世代にも実施が広がったり、20代から考え始める事が求められている時代になってきました。それだけキャリアの自由化というか個人差が大きくなってきた現れで、会社に一生捧げるだけでは安泰ではなくなってきたという事です。
参考までに、下図のワークシートを共有させて頂きます。
このワークシートは、弊社にキャリアについてご相談頂く方々へお渡しし、実際に取り組んで頂いているキャリアマネジメントのためのワークシートです。
下記に進め方について大枠を記載させて頂きますので、この機会に皆様もご自身のキャリアマネジメントについて、ワークシートを使用して実施してみてください。
※大枠の世代ごとに、進め方の注意点を明記致します。
※より本格的に実施したい場合、個別にお問い合わせ頂けますと幸いです。
■若手社員向け(前期)
職業人生をスタートしたばかりの20代若手社員のキャリアは、それぞれが抱いている漠然とした夢や目標を具体化するところから始めます。
短期〜中長期まで時間軸での因数分解をし、その時点での仕事とプライベートの状態をそれぞれ書き込みます。
次に、それを実現するために必要な経験やスキルは何かを考え、その獲得をどうすべきかということを客観的かつ具体的に考えて頂きます。
今後のキャリアの土台となる重要な計画であるため、慎重になり過ぎたり、様々な可能性が考えられるため思考が拡散してしまうなど、一人で進めると思わぬ方向に進む可能性もあります。だからこそ、第三者のアドバイスが非常に有効に働く世代、とも言えます。
■中堅社員向け(中期)
脂が乗り始めた中堅層は、よくも悪くも所属組織内での選別が進み始めた世代とも言えます。
仕事キャリアでは経営幹部として管理職となるポジションや、スペシャリストとして専門スキルを磨くポジション。プライベートでは結婚や出産、住宅購入や転勤など、複数のライフイベントが連続的に起こる層です。
また人間関係においても、上司と部下、同期内、近所や地域、親戚や家族など、仕事とプライベートとの関係性の中でも、非常に悩みを持ちやすくなり始める層でもあると思います。
自分は数年前に思い浮かべていた自分になれているのか?
理想のリーダーに近づいているのか?
本格的に後輩や部下を育成していくには何が必要か?
スキルや経験は予定通りに積み上がっているのか?
など、周囲との関係性の中で、自分を客観的に捉えることで、良くも悪くも様々な感情に苛まれたりもします。可能性の広がりを感じられるのか、逆に可能性が狭まり始めていると感じるのか、個人差がかなり出始めます。
ここで重要なことは、「周囲との関係性で物事を考えることは重要ですが、比較ばかりして自分の尺度を見失うことは避けなければならない」、という点です。
自分の中で絶対的な判断軸を作ること。この作業こそが、この層では最も重要となります。
そして、やはり客観的な目を持って、アドバイスをもらえる第三者の存在、特に社外の存在が非常に重要となってきます。
■管理職、シニア社員向け(後期~成熟期)
会社の主役として活躍してきた管理職や、成長を牽引してきたシニア向けでは、今後30年以上続く職業キャリアと、ライフスタイルが固まりつつあるプライベートとのバランスをどう考えていくのか、あらためて見直しをして頂くことが重要となります。
まずはライフスタイルについては、どうしても体力や健康面での不安が増えてくる時期でもあるため、若い頃のような働き方が出来る訳ではありません。また家庭環境も、家族の成長や健康状態の変化によって変わってくるため、自分のことだけを考えていても対応しきれない事がでてきます。
このバランスを見ながら、何を1番重要視するのかを考える必要があります。
また仕事面においては、
管理職としての経験で、今後30年を勝ち抜くことができるのか?
保有している専門性は陳腐化せず、今でも十分通用するレベルか?
新しい知識(特にテクノロジー関連)や経験の習得は、十分できているのか?
など、このタイミングであえて将来を見据えて客観視する事が必要です。
後任者や次世代の育成を考えながらも、自分自身のキャリアについてもしっかりと考えないと、いつのまにか取り残されてしまっている、という事がないようにしたいものです。
■キャリアデザイン研修の実施効果
上述のワークシートの作成を含め、企業内でキャリアデザイン研修を実施する事は、「自分自身で気付き、次のアクションを明確に出来るきっかけ」作りに繋がります。そして、このキャリアデザイン研修の効果としては、具体的に下記の3点が挙げられます。
①日々の仕事への取り組み意識の変化 実際の研修では、自分の過去を振り返り、今を見つめ、未来を想像し計画を立てて頂きます。その中で、自分が身に付けたいスキルや経験が明確になっていきますので、その後の日々の業務において習得を意識して取り組めるかどうかで、仕事の効率や生産性が大きく変わる可能性が出てきます。この業務は「自分が身に付けたいスキルに近い」、「自分が取得しているスキルで対応できるから生産性を上げて、他業務に充てる時間を増やそう」など、スキル向上を軸に考えることで、現在の仕事を見つめ直すきっかけになります。
②自発的な学習の促進 自分の将来のキャリア形成を意識することで、足りないスキルや知識を自発的に習得しようという意識になる社員もいるでしょう。リカレント教育という言葉が聞かれるようになって久しいですが、自分の立場や役割、状況を把握した上で、自発的に仕事へ取り組み学びを得ていくようになります。さらには仕事で習得できない場合は、大学院やセミナーなど外部に学びを求める行動をとる社員も増えてきます。
③会社への帰属意識や信頼の向上 キャリアは企業が決めるものではなく社員一人ひとりが考えるため、社員それぞれのキャリアを企業が尊重し後押ししていくことで、社員の会社への信頼感の向上にも繋がります。さらには、離職率の改善にも繋がる可能性があります。
少なくとも、自分のキャリアについて真剣に考えてくれる企業のことを、マイナスの理由で辞めようとする人は減るはずです。
上図は、キャリアデザイン研修の中で使用する、別のワークシートです。
自分自身のキャリアが具体的になった段階で、現在所属する組織や家庭環境の中で、いかに実現していくかを客観的に設計して頂くために使用します。
生産性という観点で、生産性を高める要因/阻害する要因が、組織(職場)/個人/家庭の3つの分類ではそれぞれどのような事が考えられるのかを、具体的に書き出します。
(生産性という観点で考えるのは、営業部や管理部など、どの組織においても共通で考えやすい指標を用いたかったからです)
当然ながら、変えられるもの/変えられないものが明らかになってきますので、生産性を高める要因を最大化するためにも、阻害する要因の中で変えられるものに着目し、変えるための計画をしっかりと立てる事。変えられないものは、本当に変えられないのか?を第三者の目線でもアドバイスし合いながら、再考する。
この作業を通じて、より具体的・客観的な計画が作られていきます。
では、実際のキャリアデザイン研修において、どういう進め方が効果的なのか、後編にて解説させて頂きます。
(実際に、私自身の過去を振り返っての事例も記載させて頂きます)
<<後編に続く>>
https://www.career-sodan.com/careerTOPIX/careermanagement2.html
【プロフィール】
中浦 洋平
株式会社キャリアライゼーション
代表取締役
2002年に新卒で高島屋へ入社。インテリジェンス(現パーソルキャリア)に転職し、ファッション業界向け人材紹介のマネジメントまで経験。リンクアンドモチベーションでの人事/組織コンサルティングを経て、ジェイエイシーリクルートメントへ。外資系企業やハイキャリア層向けの人材紹介にて、人材・教育・消費財・ファッション・小売/流通/外食・EC/デジタルなど、BtoCサービスでの複数業界に向けた事業統括責任者を歴任。新チーム立ち上げや新規領域の拡大、さらには自社社員の採用~育成・教育まで、人と組織に関する一連の業務を経験。 新サービス創出のため2019年に株式会社キャリアライゼーションを創業、現在に至る。
www.careerization.co.jp